クルーズ各社の日程表では、清水港は「Shimizu (for Mt. Fuji)」と表記されています。

🇬🇧 Read this guide in English: English version

このカッコ書きを見て、「寄港中に富士山に登れるのでは」と考える方も多いのですが、実際には登れません。

五合目まで行くのも、ほぼ難しく、実はあまりおすすめもしていません。

それでも、上陸時間に合った計画を選べば、清水から「富士山の一日」を組み立てることは十分できます。

清水は、日本でも有数の富士山ポートだと思います。

この記事では、タクシー15分の眺望から本格的な巡礼コースまで、現実的なプランを4段階に分けて紹介します。


まず知っておきたい、距離の話

富士山の山頂は、清水から直線でおよそ45キロメートル。

晴れた日には、水平線の上にはっきり見える近さです。

ただ、「山まで行く」となると、話は少し変わってきます。

車道の終点である五合目までは、順調に走っても車で片道2〜2.5時間かかります。

しかも夏は、なかなか順調にはいきません。

登山シーズンのおおむね7月10日から9月10日まで、富士宮口五合目へ続く富士山スカイラインは、マイカー規制で一般車が通行止めになります。

ツアーの車も水ヶ塚駐車場でシャトルバスに乗り換えることになり、シャトルだけで片道約40分。

合計すると、埠頭から五合目を往復するだけで、6時間近くが移動に使われる計算になります。

そのため、この記事ではまず前提をそろえておきたいと思います。

清水発の富士山デイトリップは、山に立つ旅ではなく、山を眺めて、その信仰や文化に触れる旅です。

そう考えると、清水はとても良い場所だと思います。

ここからは、上陸時間に合わせて段階別に紹介します。

第1段階:清水から出ずに富士山を見る(2〜4時間)

晴れた日なら、そもそも遠くまで行く必要はありません。

  • 三保松原: 世界遺産の松原越しに、湾の向こうに富士山が見えます。浮世絵の構図そのままの眺めです。タクシーで15〜20分ほど
  • 日本平: 茶畑と港を足元に、富士山を正面に望む展望台です。ロープウェイで久能山東照宮とセットで回れます。100ドルの船会社ツアーと近い内容を、個人でも組める場所です
  • 港そのもの: 晴れた朝なら、埠頭や水上バスからも湾の奥に富士山が見えます。費用も労力もかかりません

標準的な寄港時間で、移動より眺めに時間を使いたい方に向いています。

第2段階:電車で富士宮へ「富士山の総本山」参り(5〜7時間)※穴場

あまりガイドには載っていないのですが、富士山信仰の総本山は、清水から電車で気軽に行ける距離にあります。

清水駅からJR東海道線で富士駅へ。

身延線に乗り換えて富士宮駅まで、約1時間・片道590円です。

電車は20〜30分おきに走っています。

富士宮駅から歩ける範囲に、富士山文化の二大拠点があります。

  • 富士山本宮浅間大社: 全国に1,300社以上ある浅間神社の総本宮で、千年以上にわたって富士山信仰の中心となってきた神社です。八合目から上の山頂部は、この神社の境内地にあたります。朱塗りの社殿や、富士山の雪解け水が湧く湧玉池があり、晴れていれば鳥居の向こうに富士山そのものが見えます
  • 静岡県富士山世界遺産センター: 逆さ富士の形をした建物が水面に映ると、正しい向きの富士山に見えるという建築です。館内の螺旋スロープは、海から山頂への登山を追体験できる構成になっています。英語の展示も多く、富士山の背景知識を1時間ほどでまとめて知りたい方には、ここが分かりやすいと思います

参道のお店で富士宮やきそばを食べて電車で戻れば、埠頭から往復5〜6時間、交通費は1,500円以内です。

曇りの日でも成立する、唯一の富士山プランでもあります。

長めの寄港時間がある方、シルエットではなく文化の側から富士山に触れたい方、天気に賭けたくない方に向いています。

第3段階:プライベートツアーで裾野をめぐる(8時間〜)

貸切の車やガイド付きツアーを利用すれば、富士宮のさらに先まで足を延ばせます。

手配方法や相場は、姉妹記事のショアエクスカーション徹底比較で詳しく紹介しています。

  • 白糸ノ滝: 溶岩の崖から湧き水が何百本もの糸のように流れ落ちる滝です。富士宮の市街から30分ほど
  • 田貫湖: 「逆さ富士」の撮影地として写真家に知られている湖です

これに浅間大社と世界遺産センターを組み合わせるのもおすすめです。

登らずに富士山を楽しむプランとしては、かなり満足度の高い組み合わせだと思います。

プライベートツアーの相場は、規模と時間によって1人240〜870ドル程度。

チャータータクシーは車単位の料金です。

清水は事業者の数が多くないため、予約は2〜4週間前までに済ませておくと安心です。

車1台を割り勘にできるグループ、撮影スポットを重視する方、終日停泊の日に向いています。

第4段階:それでも五合目へ行きたい方へ(10時間〜・規制期間外のみ)

条件がそろえば、行くことはできます。

マイカー規制の期間外(7月10日より前か、9月10日より後)で、道路と天候に問題がなければ、貸切の車で富士宮口五合目(標高2,400メートル)まで上がれます。

埠頭から片道2〜2.5時間、最低でも6時間の行程です。

ただ、地元としてお伝えしておきたいことがあります。

五合目からの眺めは、富士山の眺めとしては少し物足りないかもしれません。

山の上に立っているので、肝心の富士山そのものが見えないためです。

見えるのは、砂礫の斜面と眼下の雲。

絵はがきで見るあの富士山の姿は、三保や日本平、田貫湖から見たものです。

しかも登山シーズン中はシャトルバスへの乗り換えが必要になるため、寄港日程では実質的に難しくなります。

規制期間外の長い停泊に当たり、車の手配と晴れの予報がそろっていて、「見る」よりも「立った」という経験がほしい方向けのプランです。


そもそも富士山は見えるのか

どの段階を選ぶ場合にも共通することですが、富士山はよく雲に隠れます。

夏は霞で何日も姿を消すこともあり、逆に冬の朝はかなりの高確率で見えます。

お金のかかる計画を立てる前に、三保松原ガイドの季節別の見えやすさ表を確認してみてください。

当日は、埠頭の観光案内所で「今日、富士山は出ていますか」と聞いてみるのもおすすめです。

季節を問わず言えるのは、午後より午前のほうが見えやすいということです。

空模様が良くない日は、思い切って予定を切り替えるのもひとつの選択肢です。

久能山東照宮、河岸の市、まぐろのランチで組む一日は、天気に左右されません。

第2段階の富士宮行きも、曇りの日にいちばん強い富士山プランです。


上陸時間別の早見表

上陸時間 晴れの日 霞・曇りの日
4〜5時間 三保か日本平(第1段階) 河岸の市+久能山東照宮
6〜7時間 電車で富士宮(第2段階) 電車で富士宮(曇りでも成立)
8〜9時間 ツアーで裾野めぐり(第3段階) 第2段階+市場でランチ
10時間〜・規制期間外 第3段階、こだわる人は第4段階 神社・センター・市場。長距離移動はやめておく

よくある質問

Q. 寄港中に富士山に登れますか?

登れません。

五合目から山頂までは、登りで5〜7時間、下りで3〜5時間かかります。

シーズン中の規制やシャトルバスの都合も含めると、一泊二日の行程です。

どのような寄港時間にも収まりません。

Q. 清水から箱根へ行くのはどうですか?

あまりおすすめしません。

車で片道2時間以上かかるうえ、渋滞も読めません。

箱根から見える富士山は、船から20分の日本平から見えるものと大きくは変わりません。

箱根は、横浜に寄港する日に検討するのがよいと思います。

Q. 港の近くで一番の撮影スポットは?

朝の光が差す三保松原の浜で、松を前景に入れる構図が定番です。

高さのある構図なら日本平です。

どちらも上で紹介したガイド記事で詳しく案内しています。

Q. 富士駅での乗り換えは難しくないですか?

同じ駅構内での乗り換えで、案内表示もあります。

身延線のホームまでは、少し歩く程度です。

SuicaなどのICカードが両方の路線で使えます。

迷ったら、駅員さんに「富士宮」と伝えれば大丈夫です。


*最終更新:2026年7月。富士山スカイラインのマイカー規制期間(例年7月10日ごろ〜9月10日ごろ)は年により変わります。五合目行きを計画する場合は必ず当年の情報を確認してください。電車の時刻・運賃は2026年半ば時点のものです。富士山の見え方に保証はなく、午前と冬がもっとも確率が高くなります。*