清水港に寄港するクルーズ船では、ほぼ必ずと言っていいほど「日本平・久能山東照宮ツアー」が船内で販売されています。

🇬🇧 Read this guide in English: English version

料金はだいたい1人149ドル前後、所要4時間ほど。

ただ、実はこのコース、港からタクシーで20〜30分、ロープウェイで5分。

拝観料まで含めても1人2,000円足らずで、個人でも十分に楽しめる行程です。

この記事では、行き方や費用、見どころをまとめて紹介します。


なぜこのコースが「清水寄港の本命」なのか

清水寄港で行き先の候補になる場所は、大きく3つあります。

港そのもので味わう海の幸、世界遺産の三保松原、そして市街の南側の丘陵に広がる日本平・久能山エリアです。

3つ目の日本平・久能山は、ツアーバスの車窓から眺めただけ、という乗客が実は一番多いスポット。

でも、展望と歴史、種類の違う2つの体験がコンパクトにまとまった、なかなかお得なコースだと思います。

日本平は、標高307mの丘陵地です。

駿河湾越しの富士山、水平線に連なる南アルプス、眼下の茶畑、海へ伸びる三保半島。

静岡でも屈指と言われる360度のパノラマが広がります。

日本平という名前は、日本武尊(やまとたけるのみこと)がこの山頂から国を見渡したという伝説に由来すると伝えられています。

久能山東照宮は、日光よりも古い「最初の東照宮」です。

戦国の世を終わらせた徳川家康公は、1616年(元和2年)に駿府城で亡くなり、遺命によって久能山に葬られました。

翌1617年には、二代将軍・秀忠公が社殿を造営します。

極彩色の彫刻でおおわれた御社殿は、2010年(平成22年)に国宝に指定されました。

なお、「家康公のご遺骸はその後日光に移されたのか、今も久能山に眠るのか」については、両方の東照宮の間で今も語り継がれている話です。

この2つを結ぶのが、森の谷をわずか5分で渡る日本平ロープウェイです。

移動時間そのものが、もうひとつの見どころになっています。


清水港からのアクセス

クルーズ埠頭から日本平まで、直行の公共交通はありません。

そのためツアーに任せたくなるところですが、個人で使える手段は次の3つです。

選択肢1: タクシー(おすすめ)

日の出埠頭のタクシー乗り場と、タクシーツアー(TaaS)の案内トラック
日の出埠頭のタクシー乗り場と、タクシーツアー(TaaS)の案内トラック(撮影:清水港クルーズガイド編集部)
寄港に合わせて日の出埠頭に待機する静鉄タクシー
寄港に合わせて日の出埠頭に待機する静鉄タクシー(撮影:清水港クルーズガイド編集部)

日の出埠頭から日本平山頂までは、約20〜30分。

メーター料金は交通状況によりますが、数千円程度が目安です。

3〜4人で割れば、ツアーよりかなり安く済みます。

運転手さんには「日本平ロープウェイまでお願いします」と伝えれば通じます。

覚えておきたいポイントが2つあります。

  • チャーター(貸切)を検討する: 港では、4時間15,000〜20,000円程度で貸切タクシーを手配できます。「港→日本平→参拝中は待機→港へ戻る」という行程にすれば、個人手配でいちばん困りがちな「帰りのタクシーが見つからない」という事態を避けられます。埠頭の観光案内所で手配を相談できます
  • 帰りの足を確保してから別れる: 山頂でタクシーが客待ちしているとは限りません。貸切にしない場合は、迎えの時間を約束しておくか、ロープウェイの係員さんにタクシーを呼んでもらってください

選択肢2: 静岡駅経由のバス(停泊時間が長い日向け)

停泊が8時間以上あって、ローカルな交通に乗ること自体も楽しみたい、という方向けの行き方です。

JR清水駅から東海道線で静岡駅へ(約10分)。

静岡駅前の11番のりばから「しずてつジャストライン日本平線」に乗れば、ロープウェイ前まで直行できます(約45〜50分、日中はおおむね30分間隔)。

このバスは、現金が使えないキャッシュレス運行です。

Suica/PASMOなどの交通系ICカードか、タッチ決済対応のクレジットカードを用意してください。

選択肢3: 表参道1,159段の石段(健脚向け)

久能山東照宮へは、海側の山麓、久能山下から続く1,159段の石段を登って参拝することもできます。

所要は30〜40分。

九十九折の石段からは駿河湾の眺めが楽しめて、シーズンには麓に連なるいちごハウスの景色も見えます。

段数の1,159は「いちいちごくろうさん」と覚えるのが地元流だそうです。

時間と体力に余裕があれば、「石段で登ってロープウェイで下る(またはその逆)」という組み合わせも楽しいと思います。


モデル行程(約4時間の半日コース)

午前入港を想定した組み方です。

富士山がくっきり見える確率も、午前中がいちばん高くなります。

時刻 行程 メモ
09:00 日の出埠頭からタクシー 20〜30分
09:30 日本平夢テラス 入場無料・360度の展望
10:15 ロープウェイで久能山へ 往復1,250円・片道約5分
10:30 久能山東照宮・博物館 社殿700円/共通券1,200円
11:45 ロープウェイで日本平へ戻る
12:00 タクシーで港方面へ 河岸の市で降ろしてもらうのがおすすめ
12:30 港エリアでまぐろランチ 清水港グルメ完全ガイド参照

1人あたりの費用目安(タクシー割り勘・社殿博物館共通券込み)は、約3,500〜5,000円。

ツアーの数分の一ほどの金額で、自分のペースで回れます。


日本平夢テラス:無料で楽しめるハイライト

2018年に開館した日本平夢テラスは、建築家・隈研吾氏の事務所が設計した木造格子の展望施設です。

入場は無料です。

  • 開館時間: 9:00〜17:00(土曜は21:00まで)。毎月第2火曜と12月26日〜31日は休館です
  • 屋外の展望回廊: 終日開放されているので、休館日でもパノラマだけは楽しめます
  • 館内: 地域の地質・歴史の展示があり、上の階にはカフェも入っています。窓いっぱいの富士山を眺めながら静岡茶を一服するのも、良い時間だと思います

気になるのは、「富士山は本当に見えるのか」という点だと思います。

正直に言うと、見えるかどうかはその日の条件次第です。

確率が高いのは早朝、そして空気の澄む晩秋から早春にかけて。

湿度の高い真夏は、あまり期待しすぎないほうがよいかもしれません。

ただ、富士山が隠れていても、駿河湾の大パノラマや一面の茶畑、そして眼下の埠頭に停泊する自分の船は見えます。

この眺めだけでも、足を運ぶ価値は十分あると思います。


日本平ロープウェイ:谷を渡る5分間

日本平ロープウェイは、日本平の山頂と東照宮を結ぶロープウェイです。

駿河湾を横目に見ながら、深い谷をひとまたぎします。

項目 内容
運賃 大人往復1,250円(小人630円)
所要時間 片道約5分
運行間隔 10〜15分ごと(混雑時は増発)
運行時間 日本平駅始発9:10/久能山駅最終17:00

2026年に来られる方への注意点がひとつあります。

運行会社から、2026年度に設備更新工事に伴う運休期間が案内されています。

出発前に静鉄ロープウェイ公式サイトの運行カレンダーを確認するか、埠頭の観光案内所で尋ねてみてください。

運休日でも、1,159段の石段かタクシーで久能山下へ回れば、東照宮の参拝はできます。

ロープウェイの窓口では、「ロープウェイ+東照宮のセット券」も販売されています。

別々に買うより安く済むことが多いので、確認してみてください。


久能山東照宮:「最初の東照宮」を歩く

楼門から見下ろす久能山東照宮の境内
楼門から見下ろす久能山東照宮の境内(Motokoka / Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)

楼門をくぐると、朱色と黒漆、金箔でおおわれた社殿群が山腹に連なっています。

江戸初期の名工を総動員し、わずか1年で造り上げられた建物で、後の日光東照宮の原型にあたります。

見どころは次の3つです。

  • 御社殿(国宝): 牡丹、唐獅子、龍など、本殿の彫刻は眺めれば眺めるほど発見があります。権現造の原点がここにあります
  • 神廟(家康公の御廟): 社殿からさらに山道を登った先に、生誕地・岡崎の方角(西)を向いて静かに立つ石塔です。ここまで登る参拝者は少なく、境内でいちばん厳かな空気が流れる場所です
  • 博物館: 家康公の甲冑や愛用品を収蔵しています。スペイン国王から贈られた洋時計は、鎖国以前の国際日本を物語る品です。歴史好きの方なら、共通券1,200円を払う価値は十分あると思います
項目 内容
社殿拝観料 大人700円・小中学生300円
社殿+博物館共通券 大人1,200円・小中学生500円
拝観時間 9:00〜17:00(最終受付16:00)・年中無休
所要時間 博物館込みで60〜90分

バリアフリーについて

ロープウェイの久能山駅から先、境内には石段が続きます。

歩行に不安のある方は、駐車場から段差なくアクセスできる日本平・夢テラス側を中心に楽しむのがよいと思います。


いちご、お茶、そしてもうひとつのお楽しみ

  • 石垣いちご(おおむね1月〜5月): 久能山の麓、海沿いの石垣を活かした温室群は「石垣いちご」発祥の地です。シーズン中は「いちご海岸通り」沿いの農園でいちご狩りが楽しめます。1,159段を下りてきた後の一休みにもちょうどいいと思います
  • 静岡茶: 日本平の斜面は現役の茶産地です。山頂周辺の施設ではお茶の飲み比べができ、摘採シーズンには茶摘み体験を実施していることもあります。夢テラスのカフェでも、丁寧に淹れた一杯を味わえます。静岡は日本一の茶どころです
  • 自分の船を撮る: 日本平からは、日の出埠頭に停泊中のクルーズ船がたいてい見えます。自分の船と富士山を1枚の写真に収められる、世界でも数少ないスポットです

よくある質問

Q. 停泊5時間でも行けますか?

タクシー往復で、博物館を省略すれば可能です。

4時間以下の場合は、このコースか三保松原のどちらかに絞るほうが現実的だと思います。

Q. 三保松原と組み合わせられますか?

停泊7時間以上で、貸切タクシーがあれば可能です。

「港→日本平→久能山→三保→港」が定番の周遊ルートで、これは実質、149ドルのツアーとほぼ同じ行程にあたります。

4時間チャーターなら、1人あたりの費用はかなり抑えられます。

Q. 雨の日はどうですか?

ロープウェイは、小雨なら運行します。

雨に濡れた社殿の彫刻は、つやが増して見えるという良さもあります。

ただし、このコースの主役は日本平からの眺望です。

本降りの日は、河岸の市と港近くのエスパルスドリームプラザで過ごすほうが楽しめると思います。

Q. 現金は必要ですか?

東照宮とロープウェイの窓口は、現金なら確実です。

カード対応は進んでいますが、確実とは言えないので、1人3,000〜5,000円ほどの現金を用意しておくと安心です。

港近くのセブンイレブンには、セブン銀行ATM(海外カード対応)があります。

詳しくは清水港クルーズ寄港 完全ガイドをご覧ください。


まとめ

絵はがきのような富士山のパノラマと、国宝の社殿が伝える本物の歴史。

クルーズで日本の寄港地に期待されるものが、埠頭から30分・数千円・予約不要で両方そろうのが、日本平・久能山コースです。

清水寄港日の天気予報が晴れなら、午前中の行き先としてまず候補にしてほしいコースだと思います。

寄港日全体のプランニングは、清水港クルーズ寄港 完全ガイドからどうぞ。

そして清水を離れる前に、まぐろもぜひ味わってみてください。

おすすめのお店は、清水港グルメ完全ガイドで紹介しています。

良い旅を。Have a wonderful voyage.